2011年03月01日

分身 【著:東野圭吾】

通算8作目となる東野作品

分身

を本日読み終えました。


【あらすじ】
函館市生まれの氏家鞠子は18歳。札幌の大学に通っている。最近、自分に瓜二つの女性がテレビに出演していたと聞いた--。
小林双葉は東京の女子大生で20歳。アマチュアバンドの歌手だが、なぜか母親からテレビ出演を禁止される。
鞠子と双葉、この二人を結ぶものは何か?現代医学の危険な領域を描くサスペンス長篇。


過去に読んだ「手紙」「秘密」に次ぐ長編作品で、テーマは「変身」「宿命」と同じく医療をテーマにしたものですね。

この作品の手法はちょっと変わっており、ダブル主人公である「氏家鞠子」と「小林双葉」双方の話が交互に描かれているところ。


「氏家鞠子」は北海道の函館で子供の頃から何不自由なく育てられましたが、なぜか子供の頃から「母親から真に愛されていないのでは」という感覚に捕らわれてきました。
容姿が父母のどちらにも似ていないことも気にしながら…。

やがて女子寮のある名門中学に進学しますが、たまに家に戻ってもやはりその疑惑は拭えない…

そして…悪夢の夜が…

久しぶりの家族団らんのあと、なぜか急に睡魔が訪れ、再び目を覚ました鞠子が居たのは家の庭。
そして、その家は業火に焼かれていたのでした…。
その家事で母は死亡。調査の結果、母親が火を付けて無理心中を図ったのだろうという…。

母の突然の死、そしてその後から目立つ父の不可解な言動。

鞠子は叔父の家で偶然手にした「東京」の地図と顔の無い女性が写った写真を頼りに、事の真相を探ろうと単身東京へ赴きます…。


一方「小林双葉」は学業の傍らアマチュアロックバンドの女性ボーカルとして活動してました。
父は幼い頃に死んだと聞かされ、母一人子一人で東京の安アパートで暮らしています。

とあるオーディション番組で双葉のバンドは勝ち上がり、テレビ番組に出演するオファーが。
しかし、母にはテレビに出ることを固く禁じられ、疑問に思いながらも一度は承諾しますが、やはり自分の夢を叶えるという欲求には勝てず、言いつけを破ってテレビ出演を決行します。

しかし、それが双葉の運命を大きく変えてしまいます…。

母が盗難車を使った何者かに轢き逃げされ、死んでしまうのです。

ちょうどその前日、見知らぬ男が家を訪れ、母となにやら意味深な会話をしていたのを聞いていた双葉。

そして、母の部屋を整理していて偶然見つけたとある大物政治家に関するスクラップ。

そんなとき、事故の前に母を尋ねた男から「北海道に来ないか。色々と説明したいことがある」という連絡が。

不信に思いながらも、母の死の真相を知りたいと思った双葉は男の話に乗って北海道へ…。


この作品の面白いところは、「鞠子」と「双葉」がそれぞれの関係を全く知らない状態で、お互いのホームグラウンドである北海道と東京にそれぞれが単身赴き調査をするところです。

そこで、それぞれが自分とソックリの顔の人間に間違われることで、自分と瓜二つの人間が存在することをおぼろげに知っていくのです。


そして、お互いがそれぞれ協力者の力を借りながら徐々に真相に近づいていきます。

およそ20年前、とある夫婦は子供が欲しいが夫の遺伝病のために子供が作れないことを悩んでおり、東京の知り合いである氏家に相談するのですが、実は氏家が参加する研究グループは、倫理的にタブー視されている「クローン技術」の研究を行っており、夫婦には告げずに提供された卵子を使って見事生成に成功します。

暫くは同時に成功していた「凍結技術」によって保管されていましたが、研究グループに所属していた後に双葉の母になる小林が着床実験の母体になることを志願。無事成功し、そのまま実験は続けられるはずでしたが、徐々に母性に目覚めた小林はある日研究施設を脱走し、わが子として産み、育てる決心をしたのでした。


一方鞠子の元となった受精卵は暫く凍結状態にありましたが、結婚した氏家にも子供が出来ないという問題が起こり、夫婦で不妊治療を行っていましたが、ある時凍結中の受精卵を妻に着床させるという悪魔の思いが頭をよぎります。

実は氏家に相談してきた夫婦の妻は、昔氏家が愛した女性で、彼女のクローンをわが子として育てられるかも…という恐ろしい欲望に目覚めたのでした。
そしてそれをとうとう実行してしまいます…


「双葉」はやがて、卵子の提供者である自分の「元」である女性と会うところまで辿り着きますが、その女性は「双葉」のことを激しく拒絶。老いた自分がいる一方で、若かりし頃の綺麗なままの自分が存在することへの嫉妬と憎悪…。

一度は「愛してくれるかも」という期待を持った「双葉」ですが、ここには自分の居場所は無いと痛感し、自分と同じ想いを抱いているであろうもう一人の自分へ会うためにその場を後にします。


一方「鞠子」は研究グループの人間に拉致され、父と共に北海道は富良野の研究施設へ連れて行かれます。
半ば父を人質に取られた状態で言うことを聞かないわけにもいかず、研究に協力することに。
実は「双葉」の母親がスクラップしていた政治家が治療の困難な病に冒され、その政治家のクローンを作るためには、クローンとしての成功例である「鞠子」(もしくは「双葉」)の卵子を使うのが最も成功確率が高いということがわかっていたからでした。

しかし、愛読していた「赤毛のアン」にこっそりとしたためられた父からの真実を告げる言葉と「この場を逃げろ」というメッセージに後ろを押され、「鞠子」は施設からの脱走を図ります。


そして…

富良野のラベンダー畑の中、「鞠子」の後方では炎上する施設。

「鞠子」の目の前には…

自分の「分身」である「双葉」がレモンを持ってたたずんでいたのでした…



物語はここで終わりなのですが、読んでいて最も気になった

「一体二人はどうやって出会うのだろう?」

というやきもき加減が、まさか最後の最後まで引っ張られるとはw


今後この二人は幸せに生きていくことができたのでしょうか…?

兄弟とも家族とも違う、顔が全く同じな二人…。

幾多の困難を乗り越えて出会えた二人です。きっと力を合わせ、手と手を取ってその後も懸命に生きていくことでしょう。


読み終わってとっても清々しい気持ちになれるお話でした。
posted by ラムネ at 23:19| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(2) | 小説本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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